あなたも誰かを追い詰めている ~雑誌アエラ記事より~

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AERA(朝日新聞出版) の2016年11月21日号は、過労死の問題を大きく取り上げていたのですが、そのなかで消費者が求める『過剰品質』が働く人を追い詰めているという現状について「宅配の再配達」「小売店の年中無休」などの切り口から問題提起をしていました。

□AERA 2016年11月21日号
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=18593

本文の一部を引用させていただきます。

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何度でも無料で頼める再配達に、年中無休のスーパー。当然のサービスだと思っていませんか?

 いま、午後8時3分。
 会社員の女性(38)は、都内のオフィスでパソコン画面に表示されている時刻を確認した。

「今日受け取るのは、諦めよう」

 会社から女性の自宅マンションまでは約1時間。昨日ネットで注文した10キロの米の配達を、今日の「午後8-9時」と時間を指定して依頼していた。でも、仕事が終わらない。夫も帰宅は遅くなるという。

 「明日の朝食はパンにしよう。お米は再配達してもらえばいい」

 数年前までは買い置きしていたトイレットペーパーや米、水などを、最近はなくなるギリギリのタイミングでネット注文するようになった。

 注文した翌日には間違いなく、早ければ当日にも商品が届くので、収納スペースの少ないマンション暮らしには大助かりだ。重いものは玄関の中まで運んでもらえるし、「午後8-9時」の指定にすると、9時ぎりぎりに来てくれるのもありがたい。

 受け取れなくたって、何度でも再配達を頼める。

以下、略
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受け取れなくたって、何度でも再配達を頼める・・・これは、宅配便を利用している人には、当然の感覚で再配達は当たり前のサービスになっています。

私だって、運送会社の立場でなければ、まったく抵抗なく再配達をお願いしていると思います。

これも記事からですが、国が2014年に実施した調査で、宅配便の2割が再配達になっていて、さらに15年の調査では、1回目の配達で受け取れなかった理由について、「配達が来るのを知っていたが再配達があるので不在にした」という人が4割もいたとのことです。

国土交通省の試算では、トラックドライバーの1割にあたる年間9万人に相当する労働力が、再配達に費やされているといいます。



私は、『再配達』そのものを否定しませんし、むしろ必要で便利なサービスだと思っています。


では、何が問題か?

単純に言えば、「仕事をしても、それが収入に結びついていない」ことです。

再配達といっても、通常の配達業務と同じように時間もコストもかかります。なのに、まったく対価がない。
仕事をしても、それに相当する収入がないわけです。

最初の運賃には、再配達のコストは含まれていません。
運賃はあくまで、通常配送を前提としています。

では、再配達時にその荷物を受け取る御客様から再配達料を頂けるかというと、それは無理ですよね。


どうすればいいか?

私は、販売会社(例えばネット通販会社)が再配達を前提とした運賃設定をして、配送員の再配達コストを賄うようにするしかないと思います。

元請けの運送会社の姿勢も大事で、末端の運送会社(実運送業者)にしわ寄せをしているだけでは、実運送事業者も離れていってしまうでしょう。


高齢化や働き方の変化、地域の小売店の減少などで今後もネット通販の利用者はもっと増えていくと思います。

しかし、それを支える配送現場は、すでに疲弊しきっています。
このままの末端の配送員の労働環境が変わらなければ、配送をやる人はどんどん辞めていくでしょう。

そして、ついには、配送員がいなくなり配送が出来なくなります。

私は、大袈裟なことを言っているのでしょうか?

決して大袈裟ではなく、現実に目の前に起こっている事実から将来を想像しているだけです。


自分の問題として置き換えてみれば、簡単です。

労働環境は厳しいのに、収入は多くない・・・だれも、そんな仕事をやりません。


再配達や年中無休、本当に必要ですか? 

今は、求めているサービスを支えるそのコストについて、真剣に考えないといけないタイミングなのだと思います。



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